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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

その向うには、満天の星の下に小高い丘が見えている。

「黙ってついておいで、何も怖いことはありやしないよ」

「あなた、そこに何を持っていらっしゃいますの」

「蝋燭と鍵だよ」

「マア、蝋燭ですって、そんなものが要りますの」

「ウン、わしの倉庫には電燈がないのだよ」

云いながら、わしは瑠璃子の手をしっかり握って、グングン歩いて行った。野中の細道を、星明りにすかしながら、行手の丘へと急いだ。

「あたし怖いわ。明日にしましょうよ。ね、あすにしましょうよ」

瑠璃子がおびえて尻ごみをするのを、わしは無言のまま引ずる様にして丘の坂道を昇って行った。彼女はまさか悲鳴を上げる訳にも行かず、仕方なくわしについて来た。

「サア来たよ。ここがわしの宝物蔵だ」

立止まった目の前に、黒い鉄の扉があった。丘の中腹に穿った穴蔵の入口だ。

「マア、あなた、ここはお墓じゃありませんか。大牟田家の墓穴じゃありませんか」

瑠璃子はやっとそれに気づいて頓狂な声を立てながら、わしの手を振り放そうともがいた。

「そうだよ。大牟田家のお墓だよ。なんとうまい金庫じゃないか。わしの財産がこんな所に隠してあろうとは、どんな泥棒だって気がつくまいよ。