轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
ちっとも怖いことはありやしない。穴蔵の中は綺麗なものだ。わしはしょっちゅう出入りしているので、まるで自分の家へ帰った様な気持だよ」
事実そこはわしの家に相違なかった。白髪の鬼と化してこの世に再生したわしの産屋に相違なかった。
瑠璃子はわしに片手をとられたまま小さくなってワナワナと震えていた。彼女の手先が俄に冷くなったのが感じられた。でも、悲鳴を上げる様なことはしなかった。強いて逃げ出す気力もなかった。そんなことをすれば、わしの顔が恐ろしい鬼となって、彼女に噛みつくかも知れないことを恐れたのだ。わしは暗闇の中で鍵穴を探して、さびた鉄の扉を開いた。キイイ……と死人のうめき声と共に、ポッカリ黒い口が開くと、その奥から、ゾッとする冷気が襲って来た。あの世の風が吹いて来た。
その洞穴へ進み入ろうとした時には、流石に瑠璃子は懸命に踏止ろうとしたけれど、わしは情容赦もなく、か弱い彼女を、地底の墓穴へと引ずり込んでしまった。引ずり込んで、中から入口の鉄扉をピシャリ閉めてしまった。
数秒間、わし達は盲目になった様な真暗闇に、無言のまま佇んでいた。死の静寂の中に、瑠璃子の烈しい息遣い丈けが聞えていた。