轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
わしはギョッとして、相手の顔を見つめたまま二の句が出なかった。
「ハハハハハハ」主人は力なく笑って「イヤ、驚きなさることはありません。私は人殺しですが、もうちゃんと年貢を納めて来たものです。前科者ですけれど決して悪者じゃございません。敵討をしたまでです。私に煮湯を呑ませた女房の奴に復讐をしてやったまでです」
「復讐?」
わしは思わず、ひからびた様な老主人の顔を眺めた。
「ハハハハハハ、笑って下さい。私は若かったのです。もう二十年の昔話です。今なら決してあんな真似はしやしません。あの時分は、この老いぼれの胸にも、若々しい血が燃えていたのです。お恥しい身の上話ですが、世間様も皆御承知のことだ。別に隠すにも当りません。懺悔話です。聞いて下さいませ」
妙なきっかけから、わしは老主人の恐ろしい身の上話を聞くことになった。あとで分ったのだが、古着屋の親爺は、誰彼の見境もなくこの懺悔話を始めるので、近所でも評判の変り者であった。
老人の話をかいつまんで云うと、二十年以前、彼がまだ三十代の壮年であった頃、彼の美しい女房が情夫を作って、夫の留守を窺っては、その男を引入れていることが、ふとしたことから分った。