轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
そこで彼は、その日旅に出ると偽って、姦夫姦婦が媾曳をしている現場を押え、いきなり用意の短刀で、男を一突きに突き殺してしまった。
「女房の奴、それを見ると、何だかえたいの知れぬわめき声を立てて、私に飛びかかって来ましたが、手向いでもするのかと思うと、そうではなくて、卑怯な奴ではありませんか、例の嬌態で私にあまえて、自分丈け命を助かろうとするのです。
その時のあいつの顔! アア、今でも目に見える様です。恐れの為に飛出した両眼、青ざめひき歪んだ顔、それでいて、無理に笑おうとするのです。艶かしく笑いかけて、私をなだめようとするのです。笑えば笑う程、見るも気の毒な泣き顔になるのです。
あいつは冷い手で、私の首に抱きついて、ほんとうはあんたが一番好きなのよ。忘れて――忘れて! 堪忍して! とうわずった声で、わめく様に云うのです。
併し、なんで私がその手に乗りましょう。私はあいつをはねのけ、姦夫の血に染まった短刀を、まだ温い血がダクダク流れている短刀を、女房の顔の前につきつけて、サア、これがお前の色男のかたみだ、生涯お前の肌身を離れぬ様に、ふところへ入れてやる。