轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
或は気を失って、そこへ悶絶してしまったかも知れない。
その瀬戸際でやっと彼等は身を起した。そして、激情に目の縁を赤くして、又してもニッと、溶ける様な笑顔を見合わした。
「ねえ、義っちゃん」
暫くすると、瑠璃子の口の花びらがほころびて、先ず川村を呼びかけた。
たった五日前までは、川村さん、川村さんと呼んでいた相手を、もう義っちゃんだ。一通りの親しさではない。
「ねえ、義っちゃん、あたし達地獄岩に感謝しなければいけないわね。もし、あの岩が割れてくれなかったら、今時分、こんなことしてられやしないもの」
アア、わしの愛妻は、わしの変死を感謝しているのだ。
「フフン、地獄岩なんかより僕を褒めて貰いたいね。あの岩がうまい具合に割れて落たのを、瑠璃ちゃんはまさか偶然だと思っているんじゃないだろう。アア、考えて見ると恐ろしいことだ。僕は君の愛を独占したいばっかりに、大罪を二つも重ねてしまった。僕は二重の人殺しだ。こうまで尽している僕を、君はまさか捨てやしまいね。若しそんなことがあろうものなら、第三の殺人事件が起ることを、覚悟しておいでよ」
川村は、月の外には聞くものもないと気を許し、恐ろしい打開話をしながら、又しても、瑠璃子の背中へ手を廻した。