轻松读懂日语经典作品
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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页
わしはそれで充分満足していた。外に楽しみを求める気は起らなかった。
わしらはよく、女というものについて論じ合った。わしは友達の間で、女嫌いの変物の様に云われていたが、川村は決してそうではなかった。寧ろ女性の讃美者であった。
川村が女のことを云い出すと、わしは苦い顔をした。
「女なんて、男のあばら骨一本にしか価しないのだよ。あいつらは高尚な思想も分らなければ、優美な芸術も理解しない、劣等種族に過ぎないのだよ」
わしは昔の哲学者達が、女性に加えた悪罵の数々を、長々と弁じ立てるのが常であった。
ところが、ところがだ。
人の心程当にならぬものはない。その女嫌いの、変物の、このわしが、恋をしたのだ。フフフ……、恋をしたのだ。恥かしいことだが、その娘を一目見たばかりで、わしの哲学も、わしの人生も、何もかも朝日の前の雪の様に、あと方もなく溶けうせてしまったのだ。
名前は瑠璃子というのだが、中国筋の零落士族の娘で、当時十八歳、咲きそめた紅梅の様に、匂やかにも美しい乙女であった。それが、女学校を卒業した記念か何かで、母親に連れられて、S市を見物に来ているのを、わしは散歩の途中で、深くも見染めてしまったのだ。