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はくはつき

白髪鬼

江戸川 乱歩

「冨士」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年4月~1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,046 字 · 224 页

青空文庫

警官はジロジロとわしの風体を眺めていたが、物好きな紳士もあるものだという様な顔つきで、不承不承に許してくれた。当時の支那巡査なんて、袖の下次第で、大抵のことは融通を利かしてくれたものだ。

「わたしに云い残すことがあるなら、聞いて置きましょう」

わしは、彼の手下かどうか、どちらとも解釈出来る様な曖昧な調子で話しかけた。

「フン、分らん。どうも分らん。その黒眼鏡を取ればきっと分るのだがなあ。併しまあいい。その眼鏡はこんな場所で迂闊にもはずせまい。それよりはお前に聞き度いことがある。お前あの秘密を知っているだろうな」

賊は周囲に気を配りながら、グッと声を低めて尋ねた。

秘密とは何のことか、彼の手下でないわしには分る道理がない。察するに、賊はこの一言でわしが真の手下かどうかを試そうとしているのだ。危い危い。

だが、わしはふとあることを思いついたので、大胆に云って見た。

「知ってます。大牟田の墓穴でしょう」

すると、賊はさも満足の体で、

「よしよし、もう云うな。あれを知っているからには、お前は確に俺の味方だ。あれをあのまま地の底で腐らせてしまうのは惜しいものだと思っていたが、お前が知っていればそれでいい。