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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
幸田はなおも諦め切れぬ面持で、
「おい、寝ていねえで起きろ。なア、どうしてあの鶴が鳴いたんだろう」
酒月は吸殻を火鉢の中へ投げ出すと、
「白痴が銭勘定をしやしめえし、同じことばかりいってたって仕様がねえ。なにしろめでたく千秋楽になったんだから、鶴のことなぞもうどうだっていいじゃないか。唄わなくたって元元だが、うまく唄ってくれたばかりに大分こっちの歩がよくなった。どうしたってこれを詐欺とはいわせねえ。あとは無届集会の埓をあけれアいいので、この方はどうせ手軽にすむ」
幸田は苦笑し、
「お手軽どころか、何だかひどく風向きが悪いじゃないか。幸田御用だ、なんてのは筋書になかったこったぜ。ここまで無事に落ち延びたのが不思議なくれえだ」
「といったって、どうせ段切は判っている。罰金か拘留か。まさか命をとるとはいわなかろう」
といってムックリ起ると猫板に頬杖をつき、
「おい、幸田、俺が驚いたといったのは鶴が唄ったこっちゃねえ。殴り込みに来たデクの棒のことだ。……お前はそう思わねえか。え、あれをさ」
幸田は頷き、
「そうなんだそうなんだ、俺にもどうも腑に落ちねえ。「国民」なら大倫会だし「旭」