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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

電話が切れると、局長は苦笑しながら二人の方へ向き直り、

「林はすこしあわててるよ。何を詰らないことを。……あて推量まで持ち込まれちゃたまったもんじゃありゃしない。あいつ、どうかしている」

拡声器が喋言り出す。

(只今、自動電話、銀座の十二番から皇帝暗殺計画に関する重大な密告があるから警視総監に、という電話です)

真名古は送話器の方へ走り寄り、

「こちらはなるたけ話を長引かすつもりだから、八雲町の交番へ急報して、どんなことがあっても通話者を捕えさせろ。その方の通告が終ってから拡声器へかけるんだ」

ものの一分と経たぬうちに拡声器が復命する。

(八雲町の交番へ通達終りました。これからお繋ぎします)

三人が片唾を嚥んで待っているうちに、拡声器から嗄れたような声が流れ出す。

(総監ですか。……こちらは銀座の十二番です。だいぶ待たせましたね。話を長引かして私を掴まえようとしたって無駄ですよ。始めっから一通話しか話しないことに定めてあるんだから。……あまり待たせるもんだから、もう一分半ほど過ぎてしまった。あと一分半しかない。たとえ話の途中だろうと、一通話の切れ目が縁の切れということにしますから、どうかそのおつもりで。