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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
さて、真名古はこういうと、またしても面を垂れて俯向いてしまった。一体何をいい出そうというのだ。それはともかく、枯木寒厳とはこういうのをいうのだろう。肩は寒そうに骨立ち、ぼんのくぼの毛は抜け上ってサンバラになり、影うすく膝に手を置いてションボリと俯向いているようすというものは実にどうも陰々滅々。これが血の通った人間とは受けとれぬ。さながら亡者が墓の口から吐き出され、今ここへ迷い出たかと思われるばかり。
総監は白皙な面を真名古の方へ振り向けて、真名古の言葉を待っているのだが、真名古はマクラだけふって置いて、以来杳として音沙汰がないので、総監は少々焦れ気味になり、
「話というのは今度の事件に関係のあることなのかね」
「左様です」
「なぜ僕と二人ッ切りでなければいかんのか」
「……」
「そんな重大な事なのかね」
「左様です」
真名古は依然として俯向いたまま、
「総監、犯人のアタリがつきました」
総監は椅子から飛び上って、
「えッ、それは本当か。はっきりアタリがついたのか」
「判明いたしております。お望みならば、その者の人体をことごとくこの場で活写してお目に掛ける事が出来ます。