轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
……ああ、あんな奴だとは思わなかった。あたしがこんなに実をつくしているのに、それを、こんな目に、こんな風に捌かれたと思うと、あたしそれが口惜しくて……」
とハンカチを目に持って行く。さすがの松沢もチト持て余し気味で、エヘエヘと額を叩きながら、
「これァどうも、チト聞きにくいですな。それほどまでとは思わなかった。まァ一杯頂きましょう」
とてれかくしに盃を突き出す。幸田は助け船に出て、
「そりゃそうと、一体どんな筋だったんです。ちと、お聞かせなさい。事情によっちゃ一と肌脱ぎますぜ。何しろ、こうして志摩さんもいらるることだし、それに憚りながら幸田節三あんたに代って山木にしっぺい返しを喰して不実を思い知らせてやるくらいのことは、なんの、造作もないことなんですぜ。……一体、ありようはどういう事だったんです」
印東は下素っぽく舌なめずりをして、
「事の起りは今から二年前の五月ごろ、奈良ホテルとあるだけで差出人の名のない電報が来て、ぜひ山木に逢いに来てくれというの。山木は気味わるがったけど、結局行って見ると王様が妙な女と二人で寝っころがっている。これが鶴子だったんですが、山木はその前のいきさつを知らないもんだからびっくりして、王様、どうして突然に、とたずねると、王様はニヤニヤと笑って、僕ぁ王様でもなんでもないぜ、安南の鉱山