轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
の団長、日仏混血児のルイ・バロンセリと、築地へんの待合からなまめかしく手を取り合って出て来るのを見掛けたという者もあるが、噂か事実か、今のところまだ定かではない。
岩井はさりげないふうで踏絵の肱を押しのけると、
「帰ろうって、どこへ帰るんだ」
「帰るというからには、有明荘へ帰るのさ」
「冗談いうな、ノソノソ帰りでもしようものなら、とんだとばっちりをくう。今度とっ捕まったら風検ぐらいの騒ぎじゃねえ、事件が落着するまでは陽の目も拝めねえことになる」
踏絵は目を瞠って、
「あら、そうかしら。……でも、花子がやったのにちがいないんだろう。あんな大痴者だから、もうとっくにとっ捕まっているにきまってる」
なんて恍けたようなことをいう。何か曰くのありげなようすである。
案の定、岩井は聞きとがめて、濡れたような美しい眼で、探ぐるように踏絵の顔を眺めながら、
「花子が……、ど、どうしてそんなこと知ってるんだ。何か、花がやったという証拠でもあるのか」
踏絵は、妙なふうに唇をしぼめて、
「あるといえばある、ないといえばないようなもんだけど、……どんな証拠より確かなわけを知っているんだ」