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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

が書いてあった。前章で、踏絵が話した灸の痕だらけの、松谷鶴子の呪咀絵だったのである。

扉をノックして例の四銃士の一人が入って来た。扉の前で直立不動の姿勢をとると、

「取調べの結果、いささか腑に落ちぬ事情が判明しました」

真名古は返事をしない、が、目をつぶって報告を聞く姿勢をとる。銃士は感情の翳の差さぬ冷静な面持で、

「先ほど、調査の御命令を受け、今暁、午前三時五十分から四時五十分の間に、総監殿が溜池交叉点から桜田門までの間を慰労巡察されたという御報告を差しあげましたが、ところが、これと同じ時刻、すなわち、午前三時五十分から四時五十分までの間に総監殿が、深川区第二歳晩警戒哨、清澄公園角から、向島押上町、猿江公園、洲崎弁天町までの間を巡視されていたことが判明いたしました。……つまり、二人の警視総監が同時刻に、一人は赤坂区、一人は深川区を巡視されたことになるわけであります」

といって、ポケットから一枚の紙片を取り出すと、

「各哨所を御通過になった正確な時間は、この報告書に認めておきました」

その紙片を机の上に置くと、一礼して出て行った。

二十七、道路工事の事

並に伏樋の迷路の事