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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
と首を捻っていたが、また何を考えついたか、今度はものもいわずに穴の底に立上ると、大骨を折って穴の外に飛び出し、ゼイゼイと息を切ってそのふちにしゃがみ込むと、
「……つまり、この近くで大きな建築が始まっているところを探せばいいのだ。地下室を掘り下げるような大建築なら、自然伏樋が掘り切られ、建築場のどこかにその口を明けているに相違ない。……この近所で大建築といえば、そうそう田村町一丁目の角で、いま放送局の地下室の基礎工事が始まっている。……これでいい。今度こそは間違いなし。……迷路の口はきっとそこに開いているんだ。……よし!」
といって立上ると、服の泥も払わずに日比谷公園を飛び出し、踵でぼんのくぼを蹴上げるようにして田村町一丁目の方へ走って行った。
まじかの時計台が十一時をうつ。明日の午後四時までにあと僅か五時間! 俊秀明敏なあの真名古を出しぬいて、この名もない一介の雑報記者が無事に皇帝を救い出すことが出来るであろうか。
第九回
二十八、双月流の投入の事
並に脱出の公算の事
この小説を始めてから回を重ねることすでに九回となった。事件は重畳複雑し、義理人情は紛々と錯綜って自から数奇なる人生の紋様を織り出してゆく。