轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

見ると髪はサンバラになり、顔の色は煤けてほとんど血の気もない。顔を不安げに引き歪め、額には苦悩の皺を刻んで、時々キョトキョトと入口の方へ血走った眼を走らせる。第四回、虎の門の晩成軒で川俣踏絵と怪し気な密会をしたまま、その後杳として姿を現わさなかったが、第九回に至ってこのような蕭条たる情景の中へ再び登場して来た。

裾も肩も埃まみれになって、どこを潜って来たのか、上衣の肘に鈎裂きまでこしらえ、いやはや見るもいぶせき有様。どうしたってこれが百万長者の珊瑚王の御子息とは見えない。トーキー出現のあおりを喰って失業の憂目に逢った楽士氏か、銀座裏のバアテンダー氏の成れの果てといったところ。まことに場所柄にふさわしい人体である。

秋風落莫とうち沈んでいるところへ、突然襖の外に人の足音がとまった気配がする。それを聞くと山木は、日ごろの緩慢な態度にも似ず、いきなり蒲団の上から跳ね上ってひと跨ぎで窓の傍まで飛んで行き、慌ててガラス戸を引き開けたが、厳重な忍返しが蓋のように窓を閉ざしているほか、太やかな鉄のボルトまで嵌め込まれていて首を通す隙もない。

襖の外の人物は遠慮会釈もなく、荒々しく襖をひき開けて部屋の中へ踏込んで来ると、ウロウロと鉄棒をかいさぐっている山木の肩に手をかけて力任せに引き戻すのである。