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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

するてえと、これはどういうことになるんです」

ハッチソンは車に頬杖をついて考え耽っているようだったが、何を思いついたか急に喉声を立てて笑い出し、

「それはそうと、印東の旦那、山木の窮命の件ですが、憚りながら、このハッチソンがその結末を洞察してみましょう。……わたしの察するところでは大体こんな具合ではなかったかと思うんです。……まア、そんなようにして、五人で山木と踏絵を押し包むようにして坐り込む。何しろ一件を身体に着けているというのだから話が早い。親父の判を偽造した例の公正証書か何か突きつけ、手取り足取りして実力接収と出かけてみると、……あにはからんや、それは金剛石どころか似ても似つかぬガラス玉。……ねえ、印東の旦那、そうでしょう」

印東は、あッとばかりに仰天して、しばらくは口もきけぬていだったが、やがて泳ぎ出すようにして、

「ど、どうしてそんなことを知ってるんですの」

ハッチソンは事もなげに、

「どうしてもこうしてもありゃしない。今あんたの話を聞くと、金剛石が三鞭酒の壜の底に熔接されてたといったでしょう。……考えてもごらんなさい、世界で何番目という無垢の金剛石をガラスの壜なんかへ熔接なんてテはない、傷物になってしまうんですぜ、気でも違わなけれや、そんな莫迦なことをする奴はない」