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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
ほとんど絶望に近いのである。
では、思い切って声の主に事実を打ち明けて、救い出して貰おうか。飛んでもない、自分が加十だと知ったら、生かすよりは殺すだろう。まだしも、万一を頼んで真名古が救いに来るのを待っている方がましなのであろう。
逆上したようになって、急がしくあれこれと考え廻らしているところへ、また声が響いて来た。
「王様、あなたは一体どこにいるんです。そんなところで道草を喰っていちゃ困りますよ。早く来て下さい」
畜生、どうしよう。何とかうまく胡魔化して自分がここにいることを、それとなく真名古に通知させる方法はないものだろうか。……考えていたって急にいい智慧が出るわけはない。例の体当りで、行あたりばったりやって見るに限る。
「いや、どうも弱りました。行きたいことは山々なんだが、行かれないことになりました」
「どうしたんです」
「穴の中へ落ち込んでしまいました」
「本当でしょうね」
「私の声をきいたってわかるでしょう。深いところから響くでしょう」
「なるほど。たしかにそうです。それは深い孔ですか、自分では絶対に這い上れないですか」
「絶対にだめです」
声の主は、フ、フ、フ、と含み笑いをして、