轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
一行は「鶴の子石鹸」と脊中に白く染めぬいた揃いの印絆纒を着、中には威勢のいい向う鉢巻きをしている者もある。初売りにしては少し気が早やすぎるが一体何の行列かと先頭の大旗を見ると大きな字で(日本一の大夕刊)夕陽新聞と染め抜いてある。が、これだけでは何のことやら判らない。折よくそこへ赤襷をかけた背広の男がチラシを配りながらやって来るからその一枚を受取って読んでみると、その表紙には牛の糞ほどの大きな木彫活字で、
今朝九時十二分
鶴の噴水唄わん
来りて瑞兆を見よ
来れ日比谷公園へ!
(「夕陽新聞」年極購読者に限る)
と印刷してある。
前回でも述べた通り、どういう訳か日比谷公園の噴水の鶴が、一週間ほど前から時を定めずに美しい階音で歌を唄うようになった。
最初にこれを発見したのは酒月という日比谷公園の園丁長だったが、夕陽新聞は他社に先んじて逸早くこの事実を報じ、これは国民ひとしくお待ち受け申上げる国家的瑞兆に相違ないと竹の園生の御繁栄を慶賀し、有名人士の祝辞を掲げる一方、学士博士を総動員してこの不思議なる現象に対する感想を述べさせた。中には医学的見地や軍事的な立場から述べた意見などもあり、見当違いなのも多かったが、要するに夕陽新聞はこの「鶴の噴水事件」