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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
とタイアップし、「瑞兆祝賀会」の名に仮りて古今未曽有の大芝居を打つことになったのである。
式の順序を言えば、まず幸田節三の挨拶、東京市役所水道課長の感想、この瑞兆の最初の発見者たる酒月園丁長に対する賞品の授与式、名士の祝辞、この不可思議なる現象に対する兼清博士の大講演などがあって聖寿万歳を三唱して解散する段取り。
来会者にはこの瑞兆に肖るように洩れなく「鶴の子石鹸」を贈呈するほか、夕陽新聞の半額購読券を配布する。
然しこれは今述べたようにこの大芝居に重味をつけるためのインチキに過ぎぬ。人を集めて新聞の半額券を振撒くぐらいのことは半ページの花柳新聞でもやる。然しこの名編集長がといわんよりはこの名興業師、幸田節三が畢生の智慧を傾けて考え出した一策というのはそんな生易しいものではなかった。
幸田節三はこの乙亥元旦午前九時十二分を期して必ず噴水の鶴が鳴くと断言し、夕陽新聞の年極購読者に限ってこの千載一遇の奇蹟を目のあたりに見物させようという大胆不敵な大賭博を打ったのである。
元旦の九時十二分に噴水の鶴が鳴くというのは一体何から割り出したものか元より作者などの知ろう筈はない。