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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
わたしを始め、ここにいる九人の野郎どもも、どうせ命はないものと覚悟してかかったことなんでございます。一度つがえた男の約束、弾丸のつづく限りお手向いをいたします。しかしながら、どうせ多勢に無勢、永いことではありますまい。親分、最後のおたのみでございます。王様をお引取りなさるんなら、どうかこの安亀が死んだのを見届けてからになすって下さいまし。ご無理を申します」
「そうか。では、やるぞ」
「はい、どうかご存分に」
「安亀、短い縁だったなア」
安亀はスックリと立上る。この時、安亀の顔にはもう涙のあとさえなかった。蒼白い面上に決然たる凄気を漂わせ、キット寅造と眼を見合わせると、床に膝をついている一人に、
「おい、親分をお送り申せ」
といった。
戦闘は二十分で終った。廃屋から撃ち出す弾丸は、始めのうちは、勢い当るべからざるていに見えたが、そのうち追々間遠になり、やがてばったり聞こえぬようになってしまった。
廃屋の中に入って見ると、そこに壮烈な光景が展開されていた。おびただしい弾丸をことごとく撃ちつくし、最後に生き残った三人は互いに刺しちがえて死んでいたのである。
廃屋の中を隅なく捜したが、王様の姿はなかった。