轻松读懂日语经典作品
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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
という、秘密めかしいバーを出させてその女将におさまり、この二、三年の内にもう十万は溜め込んだという評判のある才色兼備の婦人。
笑子は古市と同郷の北海道のある僻村の産で、古市が知っているころはその村の小学校の教師をしていたが、近親に当る年下の青年と怪しからぬ関係になったという風評が立ったと思う間に、どういう訳かその青年は自殺をしてしまった。笑子はこの事件のために村にいたたまれなくなって、東京に出て来て「白猫」というカフェーで女給に住み込んだが、計らずもこれが出世の緒になった。
加十の知っているころの笑子は、燈蕊のように瘠せた脂ッ気のない女ッぷりであったが、今では肩と腰に少し脂肪が乗り過ぎ、それがどうやら笑子の悩みの種になっている塩梅。以前は少し劔のある乾いた眼元も、今は色と慾の精脂でシットリと程よく艶布巾をかけられ、人を小馬鹿にしたようなしゃくった鼻さえも、こうなればいっそ愛嬌に見えようというもの。笑子はぴったりと古市に寄添うようにしながら、
「やっぱり古市さんでしたわねえ。かけ違ってちっともお眼にかからなかったけど、その後お変りはなくって」
と一息にいってのけると急にツと腕を伸して古市の手をとり、脂湿りのする生ぬるい掌の中へ加十の指先を巻込みながら、