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まと
魔都
久生 十蘭
「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页
人だけだってえ奇妙奇天烈な結論になるんです」
笑子は眉を顰め、
「アレ厭な、気障だねえ」
と呟くようにいってそっと踏絵の方へ振り返る。踏絵も妙に蒼ざめて、ハッチソンに、
「気を持たせずにお言いな、どうしたってえのさ」
「どうしたもこうしたも、要するに、有明荘で何か大事件が起きたのだと思うほかはないですな」
踏絵は焦れ切って、
「もう、じれッたいッたら。早くいえ、莫迦」
ハッチソンは手で制し、
「まあ、お内儀さん、待って下さい。私に怒ったって仕様がない。知ってるなら申しますが、私にも一向判らない。御承知の通り、私はこれで随分如才のない方だから、お馬婆を呼び出して様子を聞こうと思って、有明荘へ電話を掛けて見たのです、すると」
笑子は小肥りした膝を揺すって、
「ああ、すると」
「するてえと、受話器を外しているんで、これがてんで通じない。……いよいよ以て穏かならん事で」
一座は不安気に面を見合っていたが、やや暫くの後山木は細い指で髪を掻上げながら膝を進め、
「旦那方も御存知の通り、有明荘の住人七人のうち、鶴子丈だけが咋夜の忘年会に加わらなかった。つまり、今夜は王様と二人ッきりでちんちんかもかもの趣向だから忘年会は失礼するわ、と謝絶されたのです。