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まと

魔都

久生 十蘭

「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 293,999 字 · 578 页

青空文庫

徹底的に真相を穿って公平正確な報告書を提出するつもりです」

といって出て行った。

谷口は妙な腰付をしながらボンヤリその後を見送っていたが、追々嫌な顔色になり、しまったしまったとしきりに舌打ちをしながらいたく煩悶する態であったが、やがて耐りかねたように椅子から跳上ると、転がるように部屋を飛出し、廊下つづきの局長室へ駆込んで行った。

入って行って見ると、局長は電話器を鷲掴みにし、怒気憤々の体で警視総監と会談の最中。大体こんな風な事を言っているのである。

「無論だとも。いう迄もない事だ。……所もあろうに日比谷公園で……。畜生、幸田節三てえのはふざけた野郎だ。……やり給え、構わんからやり給え。あんな毒虫のような奴はこんな際に締め上げてしまうに限る。……うむ、俺も行く。直ぐだ直ぐだ、遠慮なくふン縛ってしまえ。いいか、判ったね」

といって投出すように受話器を掛けると、クルリと谷口の方へ振返って、

「何だ、何の用だ」

と叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)した。何か失策の報告に来たのだとすると、秘書官にとってこれははなはだ折が悪いという外はないが、ともかく秘書官は、いま真名古が真相を穿った正確な報告を持って来ると、嫌なことをいって出て行きましたが、どうもその一ト言が気になって、と恐る恐る報告に及んだ。