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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

と杯をせがむ。

そしてその杯を顔に乗せるように傾けて、また――

「なあ坊主、おぬしなどは狡い奴じゃぞ。――今の世の中で狡い人間は坊主、賢い者は町人、強い者は武家、おろかしき者は堂上方。……アハハハ、そじゃないか」

「そじゃ、そじゃ」

「好きなこともよう出来ず、さりとて政事からは戸閉めを喰い、せめて歌でも詠むか、書でも書くか。そこより他に力の出し場がないなどということが……アハハハハ、のう坊主、あろかいな」

飲んで騒ぐことなら光広も負けないし、雅談や酒の量なら信尹もおくれを取っていまいが、こういきなり捲し立てられたので、顔負けしたというか、さすがの二人も、この細ッこい闖入者のために、すっかり座興を攫われてしまった形で沈黙していた。

その図に乗って紹由は、

「太夫。……太夫はなんと思さるるな。たとえば、堂上方に惚れ召さるか、それとも町人に惚れ召さるか」

「ホ、ホ、ホ。まあ船ばし様が……」

「笑い事でない、真面目に女子の胸をたたいてみるのじゃ。ウウムそうか、いや読めた、やはり太夫も町人がよいというか。――さらばわしの部屋へ来い、さあ太夫は紹由が貰うて行く」

吉野太夫の手を自分の胸に納めて、この古武者、抜からぬ顔して起ちかけた。