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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

二

と、心細い気持に囚われている彼女たちは、たまたま、伏見で馴染の客が通ると聞いて、

「どの人さ」

「どの人さ?」

と、忽ち姦しい眼をそばだてた。

「大きな刀を背中へ懸けて、威張って歩いて来る若衆だよ」

「アアあの前髪の武者修行」

「そうそう」

「呼んでごらん、名前はなんていうの」

思いがけぬ小仏峠の上などで、自分がこんなに大勢の女郎衆に注目されているとは知らず、佐々木小次郎は、手を振って、荷駄や人足の間を通り抜けた。

すると、黄いろい声で、

「佐々木さん、佐々木さん――」

それでもまだ、まさか自分とは思わず、振向きもしないで行くと、

「前髪さん――」

と、来たので、これは怪しからぬことだと、眉をしかめて振り向いた。

荷駄の脚元に坐りこんで、弁当をつかっていた庄司甚内は、妓たちを叱りつけて、

「何じゃ、御無礼な」

といって、小次郎の姿を仰ぐと、これはいつか、吉岡の門人達が大勢して、伏見の店へあがった時、挨拶に出た覚えがあるので、

「これはこれは」

と、草をはたいて立上がり、

「佐々木様ではございませんか。どちらへお越しなさいますか」

「やあ、角屋の親方どのか。わしは江戸へ下向するが、問いたいのは、おぬしたちの行く先、大層な引っ越しじゃないか」