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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
五
五
すぐ耳元で大きく鐘が鳴ったのは、もう、だいぶ前のような気がする――
あれは確かに戌の刻であった。そうすると、約束の戌の下刻は、もうやがて迫っているところだが――と思う。
(出遅れたな、武蔵は)
伝七郎は、白い夜を見まわしながら、ただ独り、燃え残りの焚火をかかえている。
壬生の源左衛門叔父の注意で、門弟たちはみな立ち去ってしまった。足痕だけが、その後の雪に際だって黒く数えられる。
――ぽきっと、時々、凄じい音がした。三十三間堂の廂の氷柱が折れて落ちるのである。また何処かで、雪の重さに樹の枝が裂けるのであった。その度ごとに、伝七郎の眼は鷹のようにうごいた。
その鷹の影にも似た男がひとり、その時雪を蹴って、彼方の樹の間から敏速に、伝七郎のそばへ馳せて来た。
武蔵の行動を監視しつつ、宵のうちからここと聯絡をとって報告していた数名の中の最後の一人太田黒兵助だった。
今夜の大事が、もう眉を焦く所まで迫って来たことは、その兵助の顔つきだけでも、訊かないうちに分った。
足も地につかない様子で、喘いで来た息の弾みを、
「来ましたぞッ!」
と、そのまま告げた。
伝七郎は、これを聞く前に、疾く察して、火の側から立ち上がっていたのである。