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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

三

「事情は、分っておるのか」

「いえ、何もまだ」

「そうであろう。――しかし、下手人は分った。いずれ、負傷が本復したうえで聞いてみるがよい。相手は佐々木小次郎と見えた」

武蔵はそういって、自身のことばに自身で頷くのであった。

三

部屋へ戻ると、彼は手枕で、木屑の中へごろりと横になった。

夜具が展べてないわけではないが、夜具の中にはいる気持がしないのである。

きょうで二日ふた晩。

伊織はまだ帰って来ない。

道に迷っているにしては永すぎる。もっとも使い先が柳生家であり、木村助九郎という知人もいるので、子供だし、まあ遊んで行けと、ひき止められて、いい気になっているのかも知れない――

で、案じながらも、それについては、さして心を労してはいないが、きのうの朝から、刀を持って向っている観音像の彫りには、だいぶ心身のつかれを彼は覚えていた。

武蔵は、その彫りに向って、技巧を心得ている玄人ではない。また、賢い逃げ道や、上手らしい小刀の痕をつけて誤魔化してゆく方法を知らない。

ただ彼の心のなかには、彼の描いている観音の象だけがある。彼は、無念になって、その心のなかの象を、木彫として現わそうとするだけに過ぎないが、その真摯な狙いどころが、手となり、小刀の先の動きにまでくるあいだに、種々な雑念が、狙うところの心形を散漫に乱してしまう