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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

十二

しかるに今、この敵を正視すると、一年も腕をみがいて会うほどの敵でなかったことが一目で視てとれたのである。

その上に、清十郎の眸には、まったく自信がなかった。どんな未熟な相手にも闘うとなれば、猛烈な自尊心はあるものだが、清十郎には、眼ばかりでなく、全身に生気が燃えていないのだ。

(なぜ今朝、ここへ来たのか、こんな自信がない心構えで――。むしろ、破約したがよかろうに)

そう思い遣ってみると、武蔵は、敵の清十郎があわれになった。彼は、それの出来ない名門の子である。父から受けついだ千人以上の門下の上に、師と仰がれてはいるが、それは、先代の遺産であって、彼の実力ではなかった。

――なんとか、口実を作って木剣をひいたほうが相互のためだと武蔵は考えた。しかし、その機会はなかった。

「……気の毒なことをした」

武蔵は、もいちど、ひょろ長い松の生えている塚を振向いて、清十郎のために、自分の与えた木剣の傷手が、はやく癒えてくれればよいがと、心のなかで祈った。

十二

いずれにしろ、今日の事は終ったのだ。勝ったにせよ、敗けたにせよ、後までこだわっているのは兵法者らしくないことだ、未練というものである。