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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

五

お杉はそこから見て、

「まだ捕まらぬとみえる」

と、つぶやいた。そして、

「関り合いになってはつまらぬゆえ、亭主の前では黙っていたが、旅籠代を払わずに逃げた娘というのは、昼間、汝れと窓口で話していたあの朱実じゃないのか」

「そうかもしれねえ」

「お甲に育てられた養女では、碌な者であろうはずはないが、あのようなものと出会うても、この後は口など交わしなさるなよ」

「……だがあの女も、考えれば、可哀そうなものさ」

「他人に不愍をかけるもよいが、旅籠代の尻ぬぐいなどさせられては堪らぬ。ここを発つまで、知らぬ顔していやい」

「…………」

又八は、べつなことを考え出しているらしく、髪の根をつかみながら、横になって、

「忌々しい阿女だなあ。思い出すと、彼女の面が天井に見えてくる。……おれを過らした生涯の仇は、武蔵でもねえ、お通でもねえ、あのお甲だ」

お杉は聞き咎めて、

「なにをいうぞ。お甲などという女を討ったところで、故郷の衆が、誉めもせぬし、家名の面目も立ちはせぬがな」

「……ああ、世の中が面倒くさくなった」

旅籠の亭主が、その時、縁先から提燈と顔を見せていった。

「ご隠居さま。