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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

柩をかこんで暁を待つ通夜の人々や、榊の前の白い灯がふと武蔵の眼に泛かぶ――

「――自分より一足先に死んでいる人がある」

あしたは、死出の山で、その人とも、どこかで知己になりそうな気がして、微笑まれる。

通夜のひちりきは、歩いているうち、もう余程さっきから耳には聞えていたのかもしれない。――その笙やひちりきの音から伊勢の宮の稚児の館が憶い出され、腫んだ足をひき摺って登った鷲ヶ岳の樹々の氷花が、ふと考え出されたのであろう。

はて? ――と武蔵は、自分の爽やかな頭脳をそこで疑って見ざるを得なかった。――このすずやかな心地は、実に、一歩一歩、死地へ足を向けている体から来るところの――自分でも意識しない極度な恐怖のうつつではあるまいかと。

そう、自分に訊ねて、ぴたと自己の足を大地に踏み止めてみた時、道はすでに相国寺の大路端れに出ていて、半町ほど先には、ひろい川面の水が銀鱗を立てて、水に近い館の築地にまでその明るい光をぎらぎら映していた。

――と、その築地の角に、人影が一つ黒く、じっと立ってこっちを見ていた。

二

武蔵は足を止めた。

先に見せた人影は、反対にこっちへ歩き出して来る。