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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

武蔵はふと、われに返って、わが身を見直した。

眼は山を見ながら、心はそこになく、お通のことばかりがつき纏う。

彼には解けないのだ。

いくら考えてみても、処女ごころの真の相がわからない。

やがては、腹が立ってしまうのだった。なぜ彼女へ率直に迫ったことがいけないか。その火を自分の胸から呼び出したのは彼女ではないか。自分は、自分の情熱の相をそのまま彼女に見せた。すると彼女の手は、案に相違して自分を刎ね退け、自分を見下げ果てたもののように、身を躱してしまった。

あの後の慚愧、恥ずかしさ、遣り場もない苦い男の気持。それを滝つぼに投げこんで、心の垢を洗い上げたつもりであったが、日が経つに従い、またどうにもならない迷妄がわいてくる。幾度か、自分の愚を嘲って、

(女など、振り切って、なぜ先へ行ってしまわぬか!)

武蔵は、自己に命じてみたが、それはただ、おろかな自分に、言い訳の虚飾をつけてみるに過ぎない。

江戸表に出て、貴女は好きな道を習え、自分も志す所へ邁進して――と、暗に未来の誓いを与えて、こうして京都から立って来たについては、十分自分にも、責任がある。途中で振り捨てては行かれるものではないと思う。