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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

その棒も、そこらの麺棒やしん張棒を、有り合うまま、引っ抱えて来たものとは違い、一種の武器としての光を持っている。――のみならず、棒と、棒を持つ人間とが、武蔵から見ると、まったく二つにして一つのものとなっている。いかにこの男が、常にその棒と共に暮しているかが分るほどなのだ。

「やっ、誰奴だッ?」

ふいに棒は風を呼んで、権之助の背から前へ伸びた。武蔵はその唸りに吹かれたように、棒の先から、やや斜めに、身を移して立った。

「連れ人を引取りに来た」

――相手が、自分を睨めすえたまま黙っているので、

「街道からこれへ誘拐して来た女子と童を返せ。――もし無事に戻して詫びるならば免じておくが、怪我などさせてあったら承知せぬぞ」

と、重ねていった。

この辺の塀といってもよい駒ヶ岳の雪渓から、里とはひどく温度の差のある冷たい風が、星の下を、時折そよそよ忍んでくる。

「――渡せッ。連れて来いっ」

三度めである。

武蔵がその雪風よりも鋭い声で斬るようにいうと、逆手に棒を握って、喰い付くような眼をすえていた権之助の髪の毛が、針ねずみのように、颯っと立った。

「この馬糞め! おれを誘拐しだと?」