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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

五

五

――独り夜を歩む。

武蔵は好きだった。

これは彼の孤独な生来から来るものかも知れない。自分の踏む跫音をかぞえ、耳に天空の声を聞いて真っ暗な夜道を、黙々と歩いていると、すべてをわすれて、楽しいのであった。

人中の賑やかな中にいると、彼のたましいはなぜか独り淋しくなる。淋しい暗夜を独り行く時は、その反対に、彼の心は、いつも賑わしい。

なぜならば、そこでは、人中では心の表に現れないさまざまな実相が泛んでくるからであった。世俗のあらゆるものが冷静に考えられると共に、自分の姿までが、自分から離れて、あかの他人を見るように、冷静に観ることができた。

「……オ。燈が見える」

しかし――

行けども行けども闇の夜道に、ふと一つの燈を見出すと、やはり武蔵もほっと思う。

人の住む燈!

われに返った彼の心は、人恋しさや、なつかしさに、顫えるほどだった。もうその矛盾を自分に問うている遑もなく、

「――焚火をたいているらしい。夜露にぬれた袂をすこし乾かしてもらおう。ああ、腹もすいた。稗粥なとあらば無心して」

と、足はおのずとその燈へ向って急いでいる。

もう夜半であろう。

諏訪を出たのは宵だったが、落合川の渓橋を越えてからはほとんど山道ばかりだった。