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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
「さあ、存じませんなあ。――藤次どのや、他の衆のうちで、そんな旅の者を見かけた者はございませんか」
おやじが、土間炉の鍋越しに訊ねると、首を寄せて、酌ぎ合ったり囁いたりしていた三名は、
「知らねえ」
膠もなく皆、顔を振った。
武蔵は満腹して、一碗の湯をのみほし、体も温まると共に、さて食事の価が気がかりになった。
最初に、事情を告げて、それからにすればよかったが、他に三名の客が飲んでいるし、慈悲を乞うつもりでもないので、先に腹を拵えてしまったが、もし亭主がきき入れてくれなかったらどうしよう。
その時には、刀の笄でも――と思いきめて、
「おやじ、寔に相済まぬ頼みだが、実は、鳥目を一銭も持ち合せておらぬ。――と申しても、無心を頼むわけではない、此方が持ち合せておる品物を、その価として取っておいてくれまいか」
いうと、案外気やすく、
「ええ、よろしゅうござりますとも。――したが、そのお品とは、なんでございますな」
「観音像じゃ」
「え、そんな物を」
「いや、某の作というような品ではない。拙者が旅のつれづれに、梅の古木へ小刀彫りで彫った小さい坐像の観世音。一飯の価には足らぬかもしれぬが……。