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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
もう廓の灯は、後ろだった。
通う人影もとんとない。行きがけにも悩んだ掘りかけの堀端へ出て来たのである。盛り上げた土に柳の木が半分も埋まっているかと思うと、一方は低い蘆や葭の水たまりがまだ残っていて、白い星の影が更けている。
「辷りますぜ」
この堤から下へ、厄介者を担いで、菰とお稚児が降りかけた時だった。
「――あっ」
叫んだのは、小次郎であったしまた、その小次郎に、突然、振り飛ばされた両人でもあった。
「何者だっ」
と、小次郎は、堤の腹へ、仰向けに身を伏せながら、再び呶鳴った。
その声を、びゅっと、虚空へ斬りながら、背後から不意を襲った男の影は、自分の足先を、余勢に踏み外して、これも、あっ――といいながら下の沼地へ飛びこんでしまった。
「わすれたか、佐々木」
と、何処かでいう。
「よくもいつぞやは、隅田河原で同門の四名を斬りすてたな」
べつな者の声である。
「おうっ」
小次郎は、堤の上へ跳ね上がって、そこらの声を見廻した。――見ると、土の陰、木の陰、蘆の中、十人以上の人影が数えられた。彼がそこに立ったと見ると、すべてが、むらむらと刃を向けて、足元へ寄りつめてきた。