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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

先生は道具をまとめて、早く小屋へ引揚げたほうがいいよ」

空を見ていう伊織の予言は、いつも外れたことがない。今も、武蔵へそういい残すと、野分をよぎる鳥のように、見え隠れして草の海をどこともなく駈けて行った。

果たして、風も雨も、伊織のいったとおり、いつものとは変って、兇暴に募ってくる。

「――何処へ行ったのか」

武蔵はひとり小屋へ帰ったが、案じられて時々外を見た。

きょうの豪雨は常と違う。おそろしい雨量である。そして一瞬にハタとやむ。やんだかと思うと前にも増して降ってくる。

夜になった。

雨はよもすがらこの世を湖底としてしまうかとばかり降りぬいた。ほっ建て小屋の屋根はいくたびも飛ぶかと危ぶまれ、屋根裏に葺いてある杉皮が、いっぱいに散りこぼされた。

「困ったやつ」

伊織はまだ帰らない。

夜が明けてもなお見えない。

いや夜が白みかけて、きのうからの豪雨のあとを見渡すと、なおのこと、伊織の帰りは絶望された。日頃の曠野は、一面の泥海となっている。所々、草や木が、浮洲のように見えるだけだった。

ここの小屋は、やや高い所を選んであるので、幸いに、冒されないが、すぐ下の河原は、濁流が押し流れて、さながら大河の奔激である。