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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

四

四

光広はおどろいて、手の杯をこぼしながら下へ置き、

「戯れもほどこそあれ」

と、紹由の手をぎ放して、吉野太夫を自分のそばへ抱え寄せた。

「なぜ、なぜ?」

紹由は、躍起となって、

「むりに連れて行くのではのうて、太夫が、来たそうな顔しているから連れて行くのじゃが。のう太夫」

間に挟まった吉野太夫は、ただ笑っているほかなかった。光広と紹由のふたりに左右の手を引っ張られて、

「まあ、なんとしようぞ」

と、困った顔をしていた。

ほん気な意地でも鞘当てでもないが、ほん気にも躍起にもなって困る者を困らせるのが遊びである。光広もなかなか肯かないし、紹由も決して退かない。そして吉野を両方の義理に挟んで、

「さあ太夫、どちらの座敷を勤めるか、この伊達引は、太夫の胸次第、太夫がなびきたい方へ靡くがよい」

と愈※(二の字点、1-2-22)、彼女を困るような破目へ圧して、苛めにかかる。

「これはおもしろい」

と沢庵は、事の納まりをながめていた。いや眺めているばかりでなく、

「太夫、どっちへ随くのだ、どっちへ随くのだ」

と彼までが、側から気勢をケシかけて、この納まりを肴にして飲んでいた。