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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

二

そういう戦慄と、異性へ搏つ動悸と、ふたつの血の音が、沈黙の底を、こもごもに駆けていた。そのふたりの間に、牡丹の火はあくまで燃えつづけているのである。そして――彼女がその火の上にかけた釜の口から、やがて松風が沸りだすと、吉野の心は、いつもの落着きに返って、静かに、茶の点前にかかっていた。

「もう程なく夜も明けましょう……武蔵さま。いっぷくあがって、此方で、手なりとお焙りなされませ」

二

「ありがとう」

言葉だけで、ちょっと会釈したまま、武蔵は依然と、背を向けていた。

「……どうぞ」

と勧める方の吉野も、これ以上は、諄くも当るので、ついにはまた黙ってしまうほかはない。

せっかく、心をこめて立てた茶も、帛紗のうえで冷えてしまう。――吉野は、ふと、腹を立てたのか、それとも、よしなき田舎者に、無用のことをと考えたのか帛紗を引いて、茶碗の茶を、傍らの湯こぼしへ捨ててしまった。

――そしてじっと、愍れむような眼を武蔵へ向けた。相変らず武蔵の姿は、背中から見ても身体じゅうを鉄の鎧で固めているように、一分の隙も見えなかった。

「もし、武蔵さま」

「なんですか」

「あなたはそうやって、誰に備えているのですか」