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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

四

といわないばかりな。

しかし、武蔵は自分の胸に、

(自分は今、ここへ、なにを願おうとしたのか)

をたずねてみて、はっと、手を竦めてしまったのであった。

(もう宇宙と同心同体になっているはずの自分ではないか!)

と思う。

(ここへ来るまでに――いや常々から、朝に生きては夕べに死ぬる身と、死に習い死に習いしていた身ではないか)

と、われを叱る。

それが今、計らずも、平常の鍛錬を、ここぞと思う間際に当って、一穂の明りを仰ぐと、なにか、暗夜に光でも見つけたように、欣しげに心は揺れ、手はわれを忘れて、この鰐口の鈴を振り鳴らそうとしている。

さむらいの味方は他力ではない。死こそ常々の味方である。いつでもすずやかに、きれいに潔く、はっと死ねるという嗜みは、どんなに習っても、習いぬいても、容易に習いきれる修行でないことは勿論だが、ゆうべの月から今朝まで歩いて来た己れの身こそ、それを体得し切ったものと、心ひそかに、自分を誇ってさえいたのに――と、武蔵は石の如く神前に突っ立ったまま、じっと慚愧の首を垂れて、口惜し涙が頬を下ってくるのも覚えぬもののように、

(過った!)

と、悔いを心に噛み、