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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
蝶と風
一
……だがどういうのかなあ。俺は自分へ向って来る運命を、かわせないのだ。つい引き摺られてしまうのだ」
「そんなことで今の時代をどうして乗り切るか。たとえ江戸へ出てみても、江戸は今、諸国から腹の空いている人間が、眼を研いで集まっている新開地だ。とても人並なことでは立身も覚束なかろう」
「俺もはやく剣術でも修行すればよかったが」
「なにをいう。まだ二十二じゃないか。なんだってこれからだ。……だが又八、おぬしには剣の修行は人がらでない。学問をせい、そしてよい主君を求めて奉公の途につけ、それが一ばんいいと思うな」
「やるよ……俺も」
草の穂をむしり取って、又八は歯に咥えた。心から彼も自分を恥じるのだった。
同じ山間に生れ、同じ郷士の子に生れ、年も同じなこの友に対して、たった五年の歩みの違いが、彼と自分と、こんなにも大きな差を作っていたかと思うと、堪らないほど、徒食の日が後悔されてくる。
噂だけを聞いて、武蔵にあわないでいたうちは、なんの彼奴がと、多寡をくくっていられたが、こうして五年ぶりで変った姿に出あってみると、いくら意地を張ってみても、又八はなにか友達らしくない威圧さえ彼から受けて、自分の影に負けめを抱かずにはいられない。