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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
送春譜
一
夜来、飽々するほど山道を歩いて来て――いや牛の歩みにまかせて来て、黎明と共に、人間のいる里に接した武蔵は、牛の背から思わず、
「オオ」
と、眼を、拭って眺めた。
――同じ時刻に、お通と城太郎のふたりも、志賀山越えの道から、この大津の屋根を眺め、湖畔へ向って、希望の足を躍らせているはず――
峠の茶屋から峰を繞って降りてきた武蔵は、今、三井寺の裏山から八詠楼のある尾蔵寺坂にかかって来たが、お通はどこの道から降りて来るのやら。
湖畔の瀬田で落ち合うまでもなく、ひょいと、そこらで打つかっても、そう偶然でないほど、時刻も道も、ほとんど同じように辿って来たのであったが、武蔵の視野の前には未だ彼女の姿は見えなかった。
――といって、武蔵は決して、失望もしないし、会いそうなものだとも思っていなかった。
烏丸家へやった茶店の女房の返事によれば、お通は烏丸家にいないということであり、手紙は、烏丸家からお通の養生している先へこよいのうちに届けておくという消息であった。
その返事から考えると、自分の手紙が、お通の手にとどいたのは昨夜のうちとしても、あの体であるし、女のことゆえ、身支度もあろう。