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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
「風呂は」
と、自分で訊ねながら、すぐ自分で打ち消して、
「いや、尊公はもう、野天風呂でおすみじゃな。では失礼して」
と、旅装を解き、気軽に手拭を持って、出て行ってしまう。
おもしろそうな男ではある。しかし武蔵にはまだ分っていない。一体、何であんなに自分の後を尋ね、自分に親しみを持っているのか?
「おつれ様も、お召替えなさいませぬか」
と、宿の女が、どてらを出して彼へすすめる。
「わしは要らぬ。都合によっては、ここへ泊るか泊らぬか、まだ分らぬのだから――」
「おや、左様でございますか」
開け放してある縁へ出て、武蔵はようやく暮れてきた湖水へ眸をやり、その眸に、またふと、
「どうしたか?」
と物思わしく、彼女の悲しむ時の睫毛などを、描いていた。
うしろで女中が膳をすえている物音が静かにする。やがて燈火が背から映す。そして欄の前のさざ波は、見ているうちに濃藍から真っ暗になってゆく。
「……はてな、この道へ来たのは、方角を取り違えたのではないか。お通は誘拐されたという。女を誘拐す程な悪い奴が、こんな繁華な町へさしかかるわけはない」
そんなことを考えたりしていると、耳に彼女の救いをよぶ声が聞えるような気がする。