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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

二

そこで、町の中でも一番大きな旅籠と見える家構えを選んで、

「ごやっかいになるよ」

大蔵の人品もよし、挟み筥まで担がせて歩いている旅客なので、

「おはやいお着きで」

中庭を隔てた奥の間へ通して、下へも措かない扱いである。

だが、やがて陽も暮れて、どやどやと客の混む頃おいになると、主人と番頭が顔を揃えて来ていうには――

「まことにご無理なお願いでございますが、よんどころのない大勢の相客で、下座敷はかえってお騒がしゅうございましょうから、ひとつ二階へお部屋がえを……」

と、恐縮して、頼むのだった。

「ああ、いいとも。ご繁昌で結構だ」

大蔵は、気軽に承知して、手廻りの荷物を持たせ、急に二階へ引っ越しとなったが、それと入れ交いに、ここへ入って来たのは角屋の女郎衆の同勢であった。

二

「さてさて。とんだ旅籠へ泊りあわせたものだて」

大蔵は、二階へ来てから、こう愚痴めいて、自分の落着きを見まわした。

時ならぬ混雑に、いくら呼んでも、召使は来ない。お膳も来ない。

やっと、食事が来たと思うと、こんどはそれを退げに来ない。

それに、どたばたと、階下も二階も忙しげな跫音が絶えなかった。