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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

喧嘩河原

一

「帰ったぞ、どいつか、出て来ねえか。――お客さまをお連れ申しているのだ」

半瓦は、自分の家に入ると、大まかな町屋造りの奥へ向って、こう呶鳴った。

喧嘩河原

一

よくよく居心地がよいとみえ、お杉ばばが半瓦の家に起臥を始めてから、月日はいつか一年半も巡っている。

その一年半の間、ばばは何をしていたかというと、体が、がっしり癒ってからは、

(思わず長いお世話になりましたわいの。もうお暇をせにゃならぬ)

と、今日は明日はと、いい暮して来たに過ぎない。

しかし、暇を乞おうにも、主人の半瓦弥次兵衛とは、めったに顔を合わすこともない。たまたま、いたと思えば、

(まあまあ、そう気のみじかいことをいわずに、ゆるりと、敵をさがしなされ。身内の者も、絶えず心がけているのだから、追っつけ、武蔵の居所をつきとめ、ばば殿に、助太刀しようというているのに)

そういわれると、彼女もまた、ここの軒から立つ気も失せる。

初めのうちは、およそ江戸という土地がらや風俗を、忌み嫌っていた彼女も、この半瓦の家に一年半も過ごすうちに、

(江戸の人の親切さ)

を身に沁みて、

(何という、気ままな暮し)

と、目を細めて、この土地の人間を眺めるようになっていた。