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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

伊織は、山の下をのぞいた。

鬱蒼とした青葉の中に、神社の屋根の鰹木が見える。

それは今、登って来る時に見て来た、飯倉の大神宮さまだった。

この辺には、御所のお米を作る御田という名が残っていた。そして伊勢大神宮の御厨の土地でもあった。飯倉という地名も、そこから起ったのであろう。

大神宮さまとは、どなたを祀ったものであるか。これは伊織もよく知っていた。武蔵に就いて勉強しない前からだって、それだけは知っていた。

――だからこの頃急に、江戸の人たちが、

(徳川様、徳川様)

と、崇め奉るようにいうと、伊織はへんな気もちがした。

今も、たった今、江戸城の大規模な改修工事をながめ、大名小路の金碧さんらんたる門や構えを見て来た眼で――ここの暗やみ坂の青葉の底に、そこらの百姓家の屋根と変らない――ただ鰹木と注連だけが違う――佗しいお宮を見ると、猶々、へんな気もちがして、

(徳川のほうが偉いのかしら)

と、単純に不審った。

(そうだ、こんど、武蔵さまに訊いてみよう)

やっと、そのことは、それで頭にかたづけたが、肝腎な柳生家の屋敷は? ――さてここからどう行くのか。

これはまだちっともはっきりしていないのである。