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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

部屋は三十畳も敷ける広さで、藺莚が敷いてあり、大刀、手槍、鈎棒などが、手を伸ばす所にいくらでも備えてある。

板壁には、ここに起臥する無法者の乾児が、手拭だの、着替えだの、火事頭巾だの、襦袢だのを雑多に釘へ掛けつらね、中には、誰も着手のいるわけがない、紅絹裏のあでやかな女小袖なども掛け、蒔絵の鏡立ても、たった一つ置いてあった。

誰かが、或る時、

(何だ、こんな物を)

と、外そうとすると、

(外しちゃいけねえ。それは佐々木先生が掛けといたんだから)

と、いったことがある。

理由を糺すと、

「野郎どもばかりを大勢部屋に詰めておくと、癇が立って、ふだんのケチなことにばかり殺気立ち、ほんとの死に場所へ出てから役に立たねえと、先生が親分へいっていたぜ」

と、説明した。

しかし――女の小袖と蒔絵の鏡台ぐらいでは、なかなかここの殺気は和むべくもない。

「やい、胡魔化すな」

「だれが」

「てめえがよ」

「ふざけるな、いつおれが」

「まあ、まあ」

今も、大部屋の真ん中では、壺か加留多か、半瓦の留守をよいことにして、賭け事にかたまっている連中の額から、その殺気がもうもうと立ち昇っている。