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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

と紹由は、機嫌がわるくなった。

「ほかの太夫ならば、そういう挨拶も通るが、扇屋の吉野太夫ともある傾城が、買手どものわがままにまかせて、振り切って来られぬというのはどうしたものじゃ、吉野もいよいよ金で買われるようになったかな」

「いえ、そうではござりませぬが、こよいのお客様は、わけても、片意地で、太夫様が去ぬと仰っしゃれば、よけいに離してくれないのでござります」

「すべて、買手どもの心理は、みなそうしたものじゃろが。――いったいその意地のわるいお客とは誰じゃ」

「寒巌さまでございまする」

「寒巌さま?」

苦笑して、紹由が光悦のほうを見ると、光悦も苦笑して、

「かんがん様は、おひとりでお見えか」

「いいえ、あの」

「いつものお連れと? ……」

「ええ」

紹由は、膝をたたいて、

「いや、おもしろうなったぞ。雪はよし、酒はよし、これで吉野太夫が見えれば申し分のないところ。光悦どの、使いをやんなされ。――これ、これ女、そこの硯筥、硯筥」

と、取り寄せて、光悦の前へ、懐紙とそれを突きつけた。

「何を書きますか」

「歌でもよいし……文でもよいが……歌がよいな、先がなんせい当代の歌人じゃから」