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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

わしは中堂に泊っている間に、親しくその老母とも会って聞き取ったことなのだ。もう六十にもなろうという純朴な老婆から、讐と狙われているような人物がどうして偉いか。うしろ暗い仇持ちの人間を賞め称え、それが世道人心によい風を及ぼすであろうかどうか。そぞろ寒心に堪えないものがあるのでわしはいうまでだ。――断っておくが、わしは吉岡方の縁者でもなければ、武蔵に意趣のあるわけでもない。ただ自分も剣を愛し、この道に身を研くものであるゆえ、正しい批判をするまでの者じゃ。――わかったか、職人ども」

いい終って、さすがに喉が渇いたか、小次郎は茶碗を取って、がぶりと一口に飲み、

「アア、だいぶ陽が傾いて来ましたなあ」

と、連れのものを顧みる。

中堂の寺侍たちは、

「そろそろ、お立ちにならぬと、三井寺までゆかぬうち、山道で暗くなりましょう」

と注意しながら、自分たちも、痺れのきれかけた床几を離れた。

石切の職人たちは、どうなることかと一言もなく硬ばっていたが、その機を見ると、白洲から解かれたように、われがちに起って谷間へ仕事に降りてゆく――

その谷間はもう紫ばんだ陽かげになり、ひよどりの声がけたたましく谺を呼ぶ。