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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁
「…………」
又八は又八で、彼女のすがたを見ると、愛憎こもごも、血を駆け巡って、おのずから眉間に感情の錐が立ち、まったく常識というものを欠いてしまう。
まして彼は、武蔵とお通が、京都を出てから連れ立っていた姿を見ている。その後、口もきかずよそよそしく歩いているのも、畢竟、昼間だけ人目を憚っているに過ぎないものと見ていた。それだけに人目のない二人だけの時にはどんなに――と瞋恚の炎に燃えて邪推もされる。
「降りろ」
命じるように、彼は、牛の背に俯向いているお通へやがていった。
「…………」
お通には答える言葉もない。疾うに心からない人なのだ。いやもう数年も前に、先の方から許嫁という未来の日を破棄したあげく、先頃、京都の清水寺の谷間では、刃を持って自分を追い、危うく殺されかけた程、怖ろしい目に会わせられた人間。
答えるならば、
(今になって何の用が――)
という以外、挨拶がないではないかと、黙っている眼のうちに、いよいよ、彼に対する憎悪と蔑みが漲ってくる。
「おいっ、降りないか!」
又八は、二度さけんだ。
この息子も、あのお杉婆という母親も、村にいた頃からの口ぐせを未だに持って、もう許嫁でもなんでもない彼女へ、権ぺいに吩咐けがましくいうことが、今のお通には、謂なく思われて、憤っと反感をあおられてならない。