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みやもとむさし

宮本武蔵(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(五)(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 508,883 字 · 1017 頁

青空文庫

「越えればいいじゃねえか。骨惜しみすると、これだぞ」

と、馬を曳く人間へ、絶えず鞭を鳴らして、

「飯だけはきっと喰わせてやるから、心配せずに歩け」

百姓は、泣き声になって、

「じゃあ旦那、伊那までお供いたしますが、伊那へ出たら放しておくんなさいますか」

又八は、かぶりを振った。

「やかましい。俺がいいという所までだ。その間に、変な素振りをしやがると、ぶッた斬るぞ。俺の要り用なのは、馬だけで、人間なぞは、かえって邪魔くせえくらいなものだ」

道は暗い、山にかかるほど、嶮しくなってゆく。そして馬も人も疲れた頃、やっと姥神の中腹までかかり、足もとに、海のような雲の波と、朝の光を微かに見た。

馬の背にしがみついたまま、一言も物をいわずにきたお通も、朝の光を見ると、それまでの間に、もう心をすえてしまったかのように、

「又八さん。後生ですから、もうそのお百姓さんを放してやってください。この馬を返してあげて下さい。――いいえ、私は逃げはしませぬ。ただ、そのお百姓さんが可哀そうですから」

又八はなお、疑ぐっていたが、再三再四、お通が訴えるので、遂に、彼女を馬の背から解いて降ろした後、